河原

 「河原」。京都の南北をながれる川の横にある広い場所。京都は北から高野川と賀茂川がながれている。昔はも〜っとくねくねした川だったが、治水のためにまっすぐな川に改められた。こどもの頃からこの川の側である河原で遊んでいた。特に賀茂川は、そばにある下鴨小学校では恒例のマラソンコースであったため、よく走っていた。

 暖かい日差しのもと、河原に座り、本を読んだり、音楽を聴いたりしている時間が個人的には一番しあわせな時間に感じるときがある。普段はなにげない生活の空間のなかで、多くのひとが行き交う環境のなかにいると、どうしても時間がはやく感じてしまうのだが、河原にいるとまったくと言っていいほど、時間の流れが一気にかわる。犬を散歩させるひとがいたり、ジョギングをするひとがいたり、時には三味線や楽器を演奏しているひとまでいる。そんなひとりひとりが自分の生き方や価値観を持ちながら、それぞれに自分にあった時間の流れる早さを楽しんでいる空間の幸せな感覚がこちらにまで伝わってくるように思う。その時間の流れと感覚が私自身の心地よい感覚を再認識させてくれている。

 秋も深まりはじめ、河原はまた美しい情景へと変わりゆくだろう。その様子を眺めながら、ゆったりと過ごす時間が少しでも作ることができれば、これほど幸せなことはない。