昔のことばあそび『連歌』

言葉を紡ぐ文学作品として、和歌はよく取り上げられ、現在でも多くの人々が和歌の会を開いたりされている。

 

しかし、同じ時代に親しまれたことば遊びで『連歌(れんが)』という文学はあまり知られていない。

 

連歌』とは、五七五の上の句を長句として、七七の下の句を短句として、最初の長句を発句として、次の人から短句、次は長句と前に受けた句に続けて歌を連ねていく、ことば遊びであり、文芸である。

 

この『連歌』の面白いところは、連歌式目と呼ばれるルールが定められており、詠み込まれた言葉をジャンルに分類し、次の何番目の句まで、そのジャンルの句を出してはならないとか、恋の句であれば、三句まで続けてよいとか、この順番に当たった人は月や花の句を読まねばならないといった、制限がなされている。その制限された言葉の中で想い想いの句を言葉で紡いでいくのだから、非常に教養や表現力が試される。

 

通常は四十四句で一つとされ、神前や仏前においては百句を詠み上げ、一巻に纏められて奉納された。これは法楽と呼ばれ、句を奉納し、神々や仏様を喜ばせる事が最上の供物として、古くは多くの寺社で執り行われていたとされる。

 

日本は現代においても、様々なことばで森羅万象を表現し、紡いでいるが、情報が溢れる昨今、自然や肌身を感じる表現を古来の人々は豊かな表現で紡いできた。それを今一度我々現代人は見直すべき時期に来ているのではないかと思う。

 

単に見た目の文化ではなく、その精神性や哲学、そして自然観を表現に落とし込むのが、本質的な日本の美の文化であると思う。その部分を忘れずに丁寧に生活したいと個人的には思うし、言葉を扱う仕事の人達は尚のこと重要な文化であり、今一度その洗練された言葉の文化に敬意を払ってみるのもまたよいのではないかと思う。